伊藤俊治 - 20世紀写真史

Date:
2008-04-24
Category:
01_PHOTOGRAPH

92年に発刊された古い文庫を読む。表題がそれ。海外の写真の歴史を、メディアや芸術という多面から、さらに1890年から1985年という期間に限定して追っていく内容。僕は写真の歴史についてくわしく勉強したことがなかったので、入門用として以前から購入していたのだけれど、内容が難解でいつまでも読み進めることができずにいた。このほど余暇ができたので思い立って再度読んでみることにしたのだ。

史実から評論まで入り混じった内容であるので、すべてを理解しようとするといつまでも進みそうになかった。今回は取り急ぎ歴史のながれを辿ることを優先して読み進めた。かなり雑に且つ簡素にまとめた内容は以下のようになった。

動向 主要な人物
1.都市と時間の象徴
1890-1910
  • 都市の工業化と、そのプロセスを記録する写真
  • ピクトリアリズムとストレート・フォトグラフィの対立
  • 291ギャラリーの開設
  • コダック・カメラの浸透による写真の大衆化
アルフレッド・スティーグリッツ
ウジェーヌ・アジェ
マルセル・プルースト
ロベール・ドマシー
2.機械神の幻影
1910-1930
  • バウハウスの設立
  • シュルレアリスム宣言
  • 写真を"機械の眼"として扱う写真表現技法の実践
    • フォトグラム
    • フォトモンタージュ
ポール・ストランド
マン・レイ
モホリ・ナギ
3.デザインされるイコン
1925-1945
  • 写真の言語化・産業化
  • 網点印刷・タイポグラフィによる"メディアとしての写真"の確立
  • 政治宣伝・産業広告・風俗ファッションへの写真の利用
  • ヒトラーの政権掌握等により、写真家や編集者の国外逃亡が始まる
  • グラフ・ジャーナリズムの中心がヨーロッパからアメリカに移行
  • 世界大恐慌
  • ライフ誌の創刊
ジョン・ハートフィールド
ルイス・W・ハイン
ドロシア・ラング
ウォーカー・エバンス
ベレニス・アボット
4.揺れ動く記録
1945-1960
  • 写真産業の高度化・肥大化
  • メディアにおいて編集ありきではなく、写真自体が意味を持つようになる
  • 「人間家族」展の開催
  • "全世界を小さな箱のなかにおさめることである"という「決定的瞬間」の定義
  • 「決定的瞬間」を捉えた写真は世界を公正に表してはいないという反発
  • 日常的な写真表現
アンリ・カルティエ・ブレッソン
ユージン・スミス
ロバート・キャパ
エドワード・スタイケン
ウィリアム・クライン
ロバート・フランク
5.他者のフィギュア
1960-1970
  • テレビという新しいメディアの浸透
  • グラフ・ジャーナリズムの衰退
  • ライフ誌の廃刊
  • 心理的、内面的な描写を写真で試みようとする動きがはじまる
スーザン・ソンタグ
ゲーリー・ウィノグラント
ダイアン・アーバス
6.メディアと死の位相
1970-1985
  • 写真以外の美術との関連が深まる
    • スーパーリアリズム
    • コンセプチュアル・アート
    • ニューペインティング
    • ポップ・アート
  • 自己表現が創造行為ではなく消費行為になる
  • コンストラクテッド・フォトの確立
  • 若い写真家を中心に、カラー写真への着目が強まる
  • 被写体が都市から郊外へと移行していく
  • 女流写真家の隆盛
シャンディ・シャーマン
ロバート・メイプルソープ

ひとつ前に読んだ本が中平卓馬の評論本だったせいもあってか、気になったのはカメラや写真を当時の写真家がどのような視点として捉えていたのかという点。"人間の眼"または"機械の眼"として、時系列ごとにその解釈はつねに変化していっている様子。黎明期に"人間の眼"に限りなく近いと解釈されていた写真はバウハウスによって"機械の眼"として転換され、それがグラフ・ジャーナリズムの隆盛によってふたたび"人間の眼"として突き戻される。写真はその後も"人間の眼"として捉えられ、その視点の届く範囲、写真家によって内包される要素を拡大されていった。そして現代、過去にそうして内包されていた個々のイメージは限界まで達したとされて、個を排除し純粋に世界を捉えるための"人間の眼"とも"機械の眼"ともつかない視点としてさらに拡大を続けている。そういう連想を浮かべながら読んでいた。

日本の写真史についてはまったく触れられていなかった。僕は、中平卓馬もそうだが、森山大道や荒木経惟などについても、また現代写真家についてもほとんど知識がないので、それはまた別の資料を用いて勉強しなきゃならないようだ。

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