香山哲漫画短編集 - 再生紙の砦

Date:
2008-03-19
Category:
04_BOOK

ミニコミを購入した。相変わらず香山哲氏の著作、今春刊行されたばかりの短編集、「再生紙の砦」だ。

2001年~現在まで書き溜められた短編、計16本が収録されている。ドグマ出版のweb上には掲載されていない作品に触れたり、画風の変遷を辿ったりするのも面白いものだけど、それ以上に気になった点があったので今回はそれを書き留めておくことにする。

まず、登場人物のなかの女性の描写について。同作者の描く漫画において、長編では女性のキャラクターはあまり多くは描かれていないように感じていた(「この世の果てのアリス」については未見なのでなんとも言えないけれど。)。今回この短編集に収録されているなかには、女性をメインに据えたものがいくつか見受けられた。「輪廻くん」のエミリちゃんをはじめ、「流行の落とし穴」「スピノザの女」「ともだちについてのまんが」「傘」「カスミマートで会った人だろ」などなど。ここでひとつ強引に共通項を見出そうとすると、これらの作品に登場する女性の半分以上が「外見は可愛く、知識レベルが低い」様に描かれているに見えた。

小説を読んでいてもたまに思うことだけれど、登場する男女の描写は作品が違えども作者が同じであれば似ている部分が多い。漱石の描く女性は非論理的だが勘が鋭くヒステリー、太宰治は理知的で高潔な女性を多く描くように感じる。いずれも作者からすれば女性は異性であるから、作者の持つ異性感というものがにじみ出た結果なのかもしれない。受け取る側のそう仮定して、作者の性的な趣向を辿るのも面白い。

また、作者自身も解説文のなかで述べているように「人のためにエンターテイメント性を高めた、思いやり系の漫画」もいくつか見受けられ、そのなかでも「交響曲511番」は労働の鬱憤が娯楽によって解消される様を「ありがち」な描写でまとめている。通常難解な描き方をするのが特徴的な作者なだけに、この手の漫画は新鮮だった。

何らかの活動をしている人は多いが、排出した作品をアーカイブ化するように、こうしてひとつの本にまとめられるだけ量をこなしているというのには感服してしまう。掲載作品はweb上で一部閲覧が可能になっている。とくに「カスミマートで会った人だろ」は、僕がこの作者に没頭する最初のきっかけになった作品だけに個人的な思い入れも深い。ぜひオススメしたい。

ドグマ出版
http://www.dogmabooks.com/

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