人のセックスを笑うな

投稿日 :
2008.1.20
カテゴリ :
06_MOVIE

映画を観に行く。表題がそれ。

「腑抜けども悲しみの愛を見せろ」を観て永作博美にぞっこんになり、その直後に知った永作博美初の主演作がようやく公開されたので、公開日の翌日でチケットの予約を取った。

さてこの映画だが、松山ケンイチと永作博美が主演。永作博美の役どころは美大のリトグラフを教える臨時講師で、立ち回りは終始浮雲のようにつかみどころがなく、美大の生徒役である松山ケンイチがそれに翻弄され続けるといった調子。「腑抜けども・・・」のひどく貧乏くさい女性や、「空中庭園」での板尾の愛人役などと比べると、今回はごく普通の女性といった様相からは抜け出さない役だったので、目新しい感動はなかった。かといって「気球クラブ、その後」や「好きだ」のように不幸を背負った役とも相反する、奔放な役柄だったのでヘビーさもなかった。案外これは珍しいかもしれない。

永作博美以外の人物の描写がひどくうっとおしいものばかりで、松山ケンイチは煮え切らないし流されやすいし、青井優は達観しているようでその実自分勝手で行動力も鈍くてウザイ。丁度夏目漱石の「明暗」を読んだばかりだったので、同小説に出てくるような個人のエゴイズムを振りかざし合って反発しあってフラストレーションを溜める則天去私の間逆を描いた人物像と、この映画のそれとがダブって見えた。一見すると奔放なのは永作博美だけど、自分勝手なのはみんな一緒だなぁ、と。

井口奈巳監督の作品は、個人的には初めて。終始のんべんだらりとした印象を受けた。全編通してひとつのシーンでのカット割がほとんどなく、固定されたカメラのなかで登場人物が行ったり来たりしているシーンが多いから、僕らから観ると他の映画よりも一歩引いた視線で劇中の出来事を傍観している感覚があった。登場人物たちのリアリズム溢れる倦怠気味な会話や、それが淡々といつまでも繰り広げられるひとつひとつのシーンの長さも、それを助長した。

日々の生活感を壊さないままうまくドラマに仕立てる邦画の監督としては山下敦弘がいるが、この映画は彼の作るそれよりももっと淡白に、リアリズムを忠実に物語に仕立てているなぁと考え、それがユニークだと感じた。これが井口奈巳監督の特徴なんだろうか、だとすれば個人的には好みな作風である。

人のセックスを笑うな公式サイト
http://www.hitoseku.com/

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