破戒
- 投稿日 :
- 2008.1.11
- カテゴリ :
- 04_BOOK
島崎藤村の「破戒」を読み切る。僕個人にとって藤村の小説は初となるが、読み易い文書とそれほど多くもないページ量から、読破するまでに大して時間は要さなかった。
穢多出身の教師、瀬川丑松が、自身の身分を隠し続けることへの苦悩に苛まれながら生活を続ける様を描く。読み始める前に部落問題を取り扱った作品との書評を耳にしていたのだけど、物語の中心はあくまで主人公の苦悩、人種差別の問題はあくまでバックグラウンド、といった調子だった。日本における人種差別の問題については、僕自身まったくの無知且つ不勉強であるので、ここでは多くを語ることができない。
さて、「破戒」の物語であるけれど、後半に進むに従って丑松の苦悩は募り、やがて自らの出生を明らかにするシーンが訪れる。その後の展開がすさまじく、勢いで終わりまで読み進めてしまった。
丑松は、授業の終わりに教壇に立ったまま、教え子達に向かって自身の出生について語り、「今まで隠蔽していたのは全く済まなかった」と言って跪き「恥の額を板敷の埃の中に埋めた。」というこのシーンの悲壮感たるや。
その後、丑松の同僚銀之助が奔走する様が良い。嘗ては身分を隠していたころの丑松の前にて差別的な見解をあらわにしていたこの男が、全てを明らかにして一人密かに社会から消え行こうとしている友人に対して奔走する姿が描かれている。この銀之助の見せる友情じみた様が、先に見せた丑松の悲壮感と相まって実に爽快に映る。
物語は丑松が街を去るところで終わる。史上の問題に対して知識がなくとも、その人間模様を追い楽しめる物語であったと思う。
藤村については、爆笑問題の太田光が高校の時分に「夜明け前」を読み、単身墓参りに出向いたというエピソードを耳にしたことがある。それを僕は、僕自身も丁度高校生であった際に聞いて、幼い頃によくある気性のためか、ひどく感化されたのを覚えている。以来、藤村といえばネガティブなイメージが強かったのだけれど、この「破戒」は必ずしもそうとは言い切れない話であったので、今は作者に対しては若干印象が変わっている。
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