黄色い涙

投稿日 :
2007.10.09
カテゴリ :
06_MOVIE

僕は嵐が好きだ。ジャニーズの5人組のアレである。何が好きって、どうしても貧乏くさいところが好きだ。そんな貧乏くささを前面に引き出した5人全員が出演の映画、「黄色い涙」のDVDがレンタル開始されたので借りてきた。

舞台は60年代の東京。5人はそれぞれの夢を志す青年たちを演じる。漫画家、絵描き、歌手、小説家。夢は壮大だが結局どれも破れる。二宮演じる主人公だけは最後まで漫画家を続けるが、売れ線の漫画は描かずに自己表現に重きを置いて描きたい漫画を描き続ける。ここで映画は終わる。

思い出す作品がある。やはり漫画で、つげ義春の「ある無名作家」だ。小学館文庫の「ねじ式」の最後に収録されている作品。この「ある無名作家」に登場する奥井という男が、映画の主人公とダブる。

奥井は漫画家で、漫画という土俵で自己表現を果たそうとして生活を省みず、やがて漫画家のアシスタントを辞め、虫の沸くボロ屋に暮らし、売れない子持ちのホステスと一緒になって、その売春で得た金で暮らすようになる。映画の主人公にはここまでの悲惨さはないが、自己表現に重きを置いてやはり仕事を断ってしまう。奥井の顛末は不幸なものだが、彼と対峙するやはり漫画家の安井という男がいて(この安井はつげ義春の分身だろうが)、作中彼は奥井を皮肉る。

自分は下宿の便所を改造した部屋に閉じこめられ、蝿よりもっと惨めなうじ虫と化してしまった。それは下宿代を二年分も滞納したため家主も追い出すことができなかったからだ。あれは絶望以上だった。(中略)あんな生活を思えば人の手伝いなどなんでもないことだ。なによりも生活が大切・・・・・・

小学館文庫から発行されているつげのもうひとつの作品集、「紅い花」のあとがきを糸井重里が書いているが、彼がその中で述べている一節が興味深い。

おまえが思っているほど、おまえはたいしたやつじゃない

この一節は、映画での登場人物全てに当てはまる。映画は漫画家を続ける二ノ宮の表情をラストカットに添えていて、仲間が夢を諦めても一人夢を追う人間をクローズアップしたが、僕らが目を向けたほうがよいのは夢を諦めてサラリーマンとなった残りの3人であり、糸井重里の言葉は劇中最後の彼ら3人の決心そのものだった。

僕はつげ義春のほか香山哲の漫画で既にそれを思い知った。23にしてようやくである、これは遅い。この映画を観て絆される奴がいるんだろうなと、少し前の自分を省みて思う、おしまい。

映画「黄色い涙」
http://www.kiiroi-namida.com/

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