田中六大

投稿日 :
2007.3.18
カテゴリ :
03_WEB

たいへんな漫画に出会ってしまった。田中六大という漫画家がいる。氏が自身の個人サイトに置いている「ゼノの長い冬」という漫画があり、それが切ない。

絵のタッチはノートに書かれた落書きのようだが、まるで問題にならない。むしろ悲壮な内容をまるで悲壮感のないタッチで描かれているところが良い。

冒頭、女の子が道端に座り込んで、紙鍵盤を人差し指で弾くまねをし、音が鳴らないから代わりに口で「たん」「たん」と口ずさんでいる。傍らには「DONATION(寄付)」と書かれた空き缶が置かれている。開始3コマ目で紙鍵盤は風に飛ばされ、女の子はなすすべなく立ち尽くす。いきなり切ない。

女の子は「マリカ」という名前で、作中では「マリちゃん」と呼ばれている。
肉まんひとつ買えないマリちゃん。
ラジオも持っていないマリちゃん。
小学校すら通っていないマリちゃん。
団地の空き家を不法占拠して住んでいるマリちゃん。
紙鍵盤で日銭を稼ぎ、いつかホンモノの楽器を買いたいと願うマリちゃん。

マリちゃんの境遇を、他の登場人物たちは同情もせず、蔑みもしない。それが異様だ。昭和中期の漫画を読むといつも思うことがあり、それは作中に現れる貧乏の描写が、僕の人生では経験したことのないようなひどいレベルのものが多いということ。最近読んだつげ義春もそうだが、手塚治虫、水島新司、水木しげるなど、極貧が悲壮な表現で描かれており哀れみを誘う。貧乏の表現というのはそういうものだと思っていたが、「ゼノの長い冬」は違う。淡白な表現は読者に悲壮感を押し付けない。だから僕らは置いてけぼりを食らう。

田中六大氏は、僕が以前からネット上で愛読している香山哲氏と共に、次回のデザインフェスタに出展するらしい。是非とも伺いたいものだ。

ロクダイの家
http://www.rokudait.com/

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